マイナー定跡への誘い Budapest Gambit②
Budapest Gambitの2回目です。
この定跡がはやったのは1920年頃と言われており、当時はBudapest Gambitを避けるために、みんな1.d4 Nf6 2.Nf3を指すようになったとまで言われたようです。
前回の4.Nf3のラインでは、その後すぐe3を突くため、c1の黒マスビショップの展開が遅れるなどのデメリットがありました。そこでRubinsteinは4.Bf4というラインをあみ出したのでした。
・Rubinsteinバリエーション
この手順の場合、すでにe3を突かせる意味がないため、黒はBc5としません。e5のポーンを攻撃しつつ展開すると言うことで、4.Bf4 Nc6 5.Nf3 Bb4+と進みます。この場合、メインラインと違ってe5のポーンは取り返せない可能性もあります。ここで、ちょっと面白いハメ手があるので、ご紹介します。
1.d4 Nf6 2.c4 e5 3.dxe5 Ng4 4.Bf4 Nc6 5.Nf3 Bb4+ 6.Nbd2 Qe7 7.a3 Ngxe5 Nxe5などであれば問題ないですが…。
8.axb4?? Nd3# ピンのテクニックを使ったメイトでちょっとわかりにくいため、ブリッツでは私もこうやって勝てたことがあります!
こちらの手順ではルークリフトを行わず、ポーンを本当にギャンビットして、展開で勝負する感じになります。トップレベルの棋譜があるのでそれで紹介します。アロニアン、イヴァンチェクともに最高で世界ランキング2位の実力者がキャンディデートで対戦した試合になります。
□Aronian,Levon (2809)
■Ivanchuk,Vassily (2757)
Candidates Tournament London (10), 27.03.2013
1.d4 Nf6 2.c4 e5 3.dxe5 Ng4 4.Nf3 Nc6 5.Bf4 Bb4+ 6.Nc3 Bxc3+ 7.bxc3 Qe7 8.Qd5 f6 これで本当のギャンビットになりました。
9.exf6 Nxf6 10.Qd3 d6 11.g3 0-0 12.Bg2 Bg4 13.0-0 Rae8 14.Rae1 Kh8 お互いほぼ展開が完了しました。黒はセミオープンファイルにルークを並べて、機動性に優れた配置です。ポーンストラクチャーに乱れがありません。白はダブルビショップでワンポーンアップですが孤立ダブルポーンです。まだ攻防がいろいろありますが、白の方が若干有利かなと思います。
15.Nd4?!(15.h3 Bd7 16.c5! dxc5 17.e4! +-) Ne5 16.Bxe5 dxe5 17.Nf5 Bxf5 18.Qxf5 Nd7 19.Qe4 c6 20.Rd1 Nb6! まだエンジンは白有利を示していますが、c4のポーンは守り切れそうにないため、だんだん混沌としてきました。
21.Rd3 Qc5 22.Qh4 g6 23.Be4 Kg7 24.Kg2 Qxc4 25.Rfd1 Qxa2! 26.g4!? 実戦的な手で、Rh3やg5を狙っています。前記事で出てきたルークリフトの考えと似てますね。
26. … Rf4?!(Qc4! 27.f3 Nd5! 28.Bxd5 cxd5 =+) 27.Bf5 Nd5 28.Rh3 Rh8?? 29.e3! gxf5 30.exf4 1-0
最後は時間切迫だったようで、黒のIvanchukが緩手をして負けてしまいましたが、黒が勝てそうな局面もあり、この定跡も十分使えることが証明できたと思います。クイーンズギャンビットやスラブ、ニムゾインディアン、キングズインディアンなどは分岐、トランスポーズが多く、普段d4を指さない私は覚えるのがめんどくさくて、ブダペスト・ギャンビットを長らく愛用しておりました。最近使っておりませんでしたが、記事を書いていて、また使ってみようかな?!と思いました。
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