ギャンビット(Gambit)とは
チェスで、序盤にわざとポーンを(1個もしくは複数個)相手にとらせ、代わりに展開やテンポを得ることをギャンビット(Gambit)といいます。将棋でいうと「突き捨ての歩」が一番近いでしょうか。
将棋の場合は、駒が循環するので、1歩では優劣がつきにくいかもしれませんが、チェスの場合は、ポーン1個でも捨てたら戻ってきませんので(必然的に取り戻せるような手筋もありますが)、それによる代償がないと、最悪そのまま負け一直線になる可能性があります。
ポーンを捨てる代償として考えられるのは
- 中央部、もしくはそれに近いところのポーンで自分のポーンを取らせることにより、中央部の占有を阻止する
- 取られるポーンを守る手を省略することで、その分、ほかの駒の展開が進む
- ポーンがないファイルについてはルークやクイーンの利きががよくなる
ギャンビットとして一番よく指される手は、クイーンズギャンビット(1.d4 d5 2.c4)ですが、c4のポーンは原則取り戻せます。本当ならこういう題材を取り上げるべきでしょうが、私自身が指さないので、ちょっと解説できそうにないです…。
昔、自分もよく使った戦法で、ルイロペスのマーシャル・ギャンビットという定跡の試合を紹介します。ちなみに対戦者の2人はレイティング2700以上のスーパーGMと呼ばれる実力者同士です。Levon Aronianは34歳のアルメニアのGMで、現在の世界ランキングは第9位ですが、今年の試合でもマーシャル・ギャンビットを使っています。ちょっと手数が長くなるのですが、初~中級者の方が覚えるのに悪くない定跡だと思います。
□Alexey Shirov(2730)
■Levon Aronian(2773)
2009.09.06 2nd Grand Slam Masters Bilbao Final
1. e4 e5 2. Nf3 Nc6 3. Bb5 a6 4. Ba4 Nf6 5. O-O Be7 6. Re1 b5 7. Bb3 O-O 8. c3 d5[この手でマーシャル・ギャンビットになります。ルイロペスで黒からd5を突くのは、大事な争点になりますが、1ポーン捨ててでも指して、展開を図る手です]9. exd5 Nxd5 10. Nxe5 Nxe5 11. Rxe5[これで、白のワンポーンアップですが…] c6 12. d4 Bd6 13. Re1 Qh4 14. g3 Qh3 15. Be3 Bg4 16. Qd3 Rae8 17. Nd2[ここまでが、メインラインです。1ポーンは捨てましたが、黒の駒がすべてキングサイドに利きを発揮しているのに対し、白の方は守勢になっています。]17. … Qh5 18. a4[守ってばかりでは、つぶされてしまいますので、クイーンサイドに活路を開きます。] Re6 19. axb5 axb5 20. Nf1 Bf5 21. Qd2 Bh3!? 22. Bd1 Qg6 23. Bf3 Qf5 24. Bh1 Rfe8 25. Re2?![ここまで形勢はイコールでしたが、緩手が出ます。25.Qc1 h5 26.Qb1 Qf6=]
25. … h5! 26. Qc2 Qg4 27. Ree1 h4 28. Qd1 Qf5 29. Qf3? Qg6[投了が早くてよくわからないと思いますが、次の黒番でBg4→h3でクイーンが死ぬという狙いがあるので、30.Qd1 hxg3 31.hxg3 Bxf1 32.Bxd5 cxd5 33.Kxf1 Bxg3 34.Qf3 Rf6 35.Qg2 Qd3+ 36.Kg1 Bxf2+ 37.Bxf2 Rxe1 38. Rxe1 Rg6-+] 0-1
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