初心者が学ぶべき定跡③ーカロカンディフェンスー
e4を指すものにとって、ルイロペス、シシリアンディフェンスへの対策は白番でも不可欠なのですが、黒番のレパートリーとして勧める定跡というのは、ちょっと迷う感じです。イタリアンゲーム(1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4)なども、黒番でe5を指す場合は否応なしに対策が必要ですし、そもそも最近はd4を指す人が多いですから、結構大変で。
黒番のレパートリーとして、私がおすすめかつ長年愛用してきたのがカロカン・ディフェンス(1.e4 c6)です。フレンチ・ディフェンス(1.e4 e6)を勧める人もいると思うのですが、c8のビショップの扱いに困ることがある、早くから気難しいポジションになることがあるなどの理由で、個人的にはあまり好きではありません。
カロカン・ディフェンスで黒の目指すところは、低く堅固な陣形を構築して、ゆっくりと反撃します。首尾よく駒がさばけた場合、ポーンの形の良さで、終盤指しやすかったりしますが、お互い積極性がない場合「引き分け狙いの定跡」と昔は言われていました。
カロカン・ディフェンスは白からの応手で、主に3種類のバリエーションがあります。ちなみに以下のバリエーションはすべて1.e4 c6 2.d4 d5とした後のものです
- クラシカルバリエーション 3.Nc3 dxe4 4.Nxe4
- アドバンスバリエーション 3.e5
- エクスチェンジバリエーション 3.exd5 cxd5
クラシカルバリエーションは私自身のレパートリーで、かつ日本でも人気がありますが、カロカンの大御所、IM小島慎也さんのブログでの解説(Caro-Kann Classical Move by Move)が詳しく、わかりやすいと思いますので、そちらを参照してください。
この中で、白番で最近人気があるのはアドバンスバリエーションで、白はe5とポーンを押し込むことで、スペースの広さや展開を主張する一方、黒にはすぐc5を突く手や、c5は保留して、ピースの展開を図り、機を見てc5やf6から白のセンターポーンを崩していく手があります。ちょっと、フレンチディフェンスと似たポーンストラクチャーや展開となりますが、最初にe6を突いていない分、c8のビショップをすぐに出すことができます。
今回は、昨年の全日本選手権でその小島慎也さんと私が対戦した際の試合をご紹介します。いいところまで行ったんですけどねー。
□Higashishiba Teruomi(2041)
■Kojima Shinya(2463)
2016 第50回全日本チェス選手権全国大会 10R
1.e4 c6 2.d4 d5 3.e5 Bf5 4.Nf3 e6 5.Be2[Nigel Shortが1990年代、この手で成功を収めたのでShort Systemと言われます]
5. … Nd7 6.0-0 h6[ビショップを引く狙いと、g5を突いていく狙いがあります] 7.Nbd2 Ne7 8.c3 Qc7 9.Nb3 g5 10.Ne1[狙いはf4など]10. … Bg7 11.Bd3?![11.f4 0-0-0 12.Nd3 Rdg8 13.Bh5とキングサイドを固めてしまう方がよかったようです。] 0-0-0 12.a4 f6 13.exf6 Bxf6 14.Bxf5 Nxf5 15.f4?! Nd6?![お互いに緩い手が出ます、白はピースの展開が遅いので、ポジションを開きすぎるとキングサイドからの黒の攻めを受けにくくなります。黒はルークをgファイルに回すべきだったでしょう。] 16.Nd3 Ne4 17.Ne5 Rhf8 18.Qg4?! Bxe5! 19.dxe5 gxf4 20.Bxf4 Qb6+ 21.Nd4 Qxb2T 22.Nxe6 Rg8 23.Qh3 Rde8 24.Nd4 Nxc3?[Qxc3とされると、クイーンの強制交換となり、ワンポーンダウンの白は苦しいところでした] 25.e6 Nf6 26.Rae1 Nce4? 27.Nb5!?[かっこいい手ですが、Nxc6の方が勝っています。27.Nxc6! bxc6 28.Rb1 Rxg2+(クイーンがよけると、Rb8#) 29.Qxg2 Qxg2+ 30.Kxg2 ±] 27. … h5? 28.Rb1?![Nxa7+としてからだったら決定的でした…] Qxg2+ 29.Qxg2 Rxg2+ 30.Kxg2 cxb5 31.Rfc1+ Kd8 32.Rxb5 b6 33.a5 Rxe6 34.axb6?[Rc7!] axb6 35.Rxb6 Rxb6 36.Bc7+ Kd7 37.Bxb6 Nd6 38.Bd4 Nfe4 39.Rf1 Ke6 40.Rf8 Nf5 41.Bb6 Nf6 42.Rh8 d4 43.Bxd4? Nxd4 44.Rxh5?? [無理せず引き分けを、と思ったのが運の尽きでした…]Nxh545.Kf2 Ke5 46.h4 Ke4[この時点で18手詰めになっているようで] 47.Ke1 Kd3 48.Kf2 Kd2 49.Kf1 Nf3 50.Kg2 Ke2 51.Kh3 Ne5 52.Kg2 Ng4 53.Kh3 Ne3 54.Kh2 Kf3 55.Kh3 Nf4+ 56.Kh2 Ng4+ 57.Kg1 Kg3 58.Kh1 Ne3 59.h5 Ne2[ポーンがあるためにステールメイトにならず、逃げられません。] 0-1
こういう負け方はなかなかできないので、非常に勉強になりました…(苦笑)
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