初心者が学ぶべき定跡④ーフレンチディフェンスー
久しぶりに定跡シリーズの第4弾、フレンチディフェンス(French Defense)について解説します。フレンチディフェンスとは、白の初手1.e4に対してe6と受けるもので、e4への応手としては、データーベース上、c5、e5に次いで3番目に多い手となっています。日本のチェスプレイヤーの中でも、人気のある作戦ですので、覚えておいて損はない定跡です。
さて、フレンチディフェンスを指す場合に、黒の側として覚えておくこととしましては、
- 白にセンターのスペースを明け渡す代わりに、クイーンサイドから反撃する
- e5に白ポーンが進んだ場合は、いずれかのタイミングでf6(場合によってはf5)とポーンをぶつけて反撃する
- c6の白マスビショップが使いにくくなる
フレンチディフェンスの基本的な手筋
1.e4 e6となったときに、2.d4 d5と進むのが普通です。もちろんそれ以外の手筋もあると思いますが、それは基本的な定跡の手を理解してからにした方がいいと思います。
3手目以降は
- 3.exd5 exd5 エクスチェンジ・バリエーション(Exchange variation)
- 3.Nc3 Bb4 ウィナワー・バリエーション(Winawer variation)
- 3.Nc3 Nf6 クラシカル・バリエーション(Classical variation)
- 3.Nd2 タラッシュ・バリエーション(Tarrasch variation)
- 3.Nd2(or Nc3) dxe4 4.Nxe4 ルビンシュタイン・バリエーション(Rubinstein variation)
などの変化があります。
エクスチェンジ・バリエーションは、白黒対称のポーンストラクチャーになり、展開を考えやすいと思いますが、黒の白マスビショップの通り道があいてしまい、フレンチディフェンスの欠点を早期に解消させてしまうと言うデメリットも大きいと思います。相手のプレパレーションを外すにはいいかもしれません。
ルビンシュタイン・バリエーションについては、5手目の黒がQd5とやや変則的な応手の試合でしたが、この前のIVLの記事、第26回IVLに参加しました、で取り上げました。このバリエーションの大きなポイントは、白の反応がクラシカルにしろ、タラッシュであったにしろ、自分のレパートリーに引き込みやすい点でしょうか。ただ、例えば、カロカン・ディフェンスのクラシカルで1.e4 c6 2.d4 d5 3.Nc3 dxe4 4.Nxe4となったときの形を比較すると、e6にポーンがある分、やはり白マスビショップの展開に困る部分があり、このあたりをうまく捌けるかがポイントになります。同じような駒組みをするなら、私の個人的な好みはカロカン・ディフェンスと言うことになります。
タラッシュ・バリエーションは私自身もレパートリーとしており、実際人気もある手筋ですが、今後、また紹介する機会もあると思いますので、今回はパスします。ちなみにタラッシュ・バリエーションの特徴は、白としてはd4のポーンをc3とポーン、e2のナイトなどで固く守れ、次第にポジションを整えていくのに対して、黒は、準備ができたらf6→e5とポーンをついてセンターから反撃したり、c8のビショッブをd7→e8→g6(or h5)と動かして前線に出していくなどのプランがあります。
今日の一局(フレンチディフェンス ウィナワー・バリエーション)
3.Nc3とする手は、私も学生の頃に指していました。当時はそちらの方が主流でしたし、白がキングサイドを攻めて、黒がクイーンサイドから反撃するという構図もはっきりして、定跡の性質がわかりやすいと思います。今回はウィナワー・バリエーションの短めの試合を1局解説したいと思います。白のViktor Bologanはモルドバ所属のGMで、ピークレートは2734と屈指の強豪プレイヤー、大会優勝歴や著書も多数ある方です。黒のRafael Vaganianはアルメニア所属のGMでこちらもソビエト選手権で優勝したこともある強豪プレイヤーです。
□Viktor Bologan(2659)
■Rafael Vaganian(2587)
2006.10.12 European Club Cup 5R
1. e4 e6 2. d4 d5 3. Nc3 Bb4 4. e5 c5 5. a3 Bxc3+ 6. bxc3 Ne7 7. Qg4 O-O[定跡の手筋ですが、ここでキャスリングはなんとなく抵抗感がありますね…] 8. Bd3 Nbc6 9. Bg5 Qa5 10. Ne2 Re8?![10. … Ng6 11.O-O Qa4 12.f4 =] 11. h4 Nxd4 12. Rh3[こういうイケイケな手は好きですね!] Nxe2?[12. … Ndf5が正着のようです。以下、13.Bf6 Kh8 14.Qg5 gxf6 15.Qxf6+ Kg8 16.Kf1 Nxe2 17.Bxf5 exf5 18.Qg5+ =] 13. Kxe2 Ng6 14. h5 Nxe5 15. Qg3 Nxd3??[これが敗着手でした。Ng4!が粘り強い手で以下、16. Qxg4 e5 ±] 16. Bf6! Nf4+ 17. Kd2![ここでQxf4??としてしまうと大逆転!17.Qxf4?? e5 18.Qg5 Qa6+! 19.Rd3 Qxf6 -+] Ng6 18. hxg6 fxg6 19. Rxh7! [以下、19. … Kxh7 20.Rh1+ Kg8 21.Qxg6 Re7 22.Bxg7 Rxg7 23.Qe8#などで、メイトが避けられません] 1-0
初心者が学ぶべき定跡シリーズ
初心者が学ぶべき定跡①ールイロペスー
初心者が学ぶべき定跡②ーシシリアンディフェンスー
初心者が学ぶべき定跡③ーカロカンディフェンスー
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